極上な恋のその先を。
「知ってますか? 桜が綺麗に咲く理由」
「桜?」
唐突の質問に、俺は首を傾げた。
ただジッと俺の答えを待っている渚。
キラキラとしたその顔は、一体どんな答えを待ってだか。
煙草の火を消しながら、うーんと考える素振りを見せた。
「――……ああ、あれか。桜の木の下には死体が、」
「ち、違いますよ!そうじゃないですっ」
慌てたようにブンブンと首を振って見せた渚が、「コホン」と咳払いをした。
「桜がピンク色に染まるのは、その下にいる人の想いを吸い取るって言うんですよ?」
「想い?」
「はい。春は恋をする季節でしょ?」
「ふーーん」
それを言うなら、死体の血を吸い取ってピンク色に色づくんだろ?
青白い月明かりの下、俺を見上げるその頬が桜のようにピンク色に染まっているのに気付いた。
……。
「で、何が言いたいんだ?」
「へっ?」
ギョッとしたように目を見開いた渚。
それが可笑しくて、もっと意地悪してみたくなる。
「つまり、この桜がキレイなのは、お前への俺の想いが理由って言いたいんだろ?」
「……えっ、あの、それは……」
かああ、と耳まで赤く染まる。
何度も瞬きを繰り返して、ソワソワと視線を逸らした。
わかりやすい。
吹き出しそうなのを堪えて、俯いてしまった渚の腕を引き寄せた。