極上な恋のその先を。


「あー、やっぱり忘れてましたね? ほら、お花見の計画立てるって約束してたじゃないっすか!」


ムッとしたように目を細めた真山くん。
人懐っこいその顔が、いじけたように変わる。



「そ、そうだったね。えっと、今週の金曜だっけ?」

「そうですよ!場所取りもしなくちゃだし、忙しいんですからね」

「ご、ごめん」



……お花見、かあ。
なんか、そんな気分じゃないなぁ。



真山くんが持ってきたA4の用紙に視線を落とす。

と、その時だった。
急に真剣みを帯びた声が、あたしを呼んだ。


「渚さん」

「?」




顔を上げると、真山くんがジッとあたしを見つめていて。
ウェーブのかかった前髪の奥で、子犬のような瞳が揺れる。



「久遠センパイから、なにか連絡ありました?」

「……」



真山くんのその言葉に、思わず言いよどんでしまう。
言葉にしようと口を開き、でもそれは空気となって消えた。




そう……。

センパイはまだ、遥か遠いパリにいて。
あたし達は、ずっと離れ離れなんだ。



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