極上な恋のその先を。

いつか真山が言ってたっけ。

レッサーパンダみたいだって。
なんつーか、反応が小動物みたいなんだよなぁ。



「イジワルなとこは、全然変わってないんですね。パリに行ってちょっとは優しくなってるのかと思いましたよ」


ジト目で俺を睨んだ渚は、そう言って唇を尖らせた。



……。


甘い香りが鼻をかすめる。

桜……、いや違う。


これは、コイツの匂い。
髪から、首筋から、鎖骨から、甘い蜜のような香りがする。


俺を、誘ってる。



「……」


こんなふうに俺を誘惑するなんて、ほんとお前はこえー女だな。

昔からそうだ。
渚からは、そんな香りがして。

衝動的に、手を出してしまいそうになる。
それを抑えるのは、結構大変だった。



「センパイ?」



ぼんやりとそんな事を考えていると、不思議そうな渚が覗き込むように俺を見た。
ふわりと、香りが強くなる。


「大丈夫ですか?」

「……大丈夫じゃねぇよ。お前、責任とれ」

「え?」


首を傾げた渚の耳元で囁くように言うと、噛み付くように口づけた。


「んんっ……」


抵抗する隙を与えないように、深く角度を変えて。
必死に腕にしがみつく渚の体を掻き抱いた。

そのぬくもりに、抑えきれない何かが沸き起こる。


このまま、抱きてぇな……。


そっと渚の背中を撫で上げれば、ビクリと反応する。
必死にキスに応えながらも、その手は小さく抵抗していた。

< 20 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop