極上な恋のその先を。
すっかり抵抗する気をなくしたあたしは、あちこちに降ってくるセンパイのキスを受け止める。
頬、首筋、鎖骨、耳たぶ、そして最後に唇。
身体を撫でるその指は、丁寧で優しくて。
それだけで、頭の奥がボーっと痺れていく。
「ぁ……」
次々に与えられる快感に必死に耐えていると、ふとセンパイが顔を上げた。
「渚」
「……は、はい」
潤んだ瞳で見上げれば、長い睫の奥の少しだけ茶色がかった瞳があたしを見つめていて。
伏し目がちに震え、瞬きするたびに頬に影が落ちた。
センパイはキスをしながら耳元に唇を寄せると、甘い甘い吐息が耳たぶを掠めた。
「我慢するなよ、声。……聴かせろ」
「え……」
そう言って、少しだけ身体を起こしたセンパイの指が頬を滑る。
そのままジッと見つめられ、フワリと目を細めた。
「お前の声が聴けなきゃ意味ねーんだよ」
「……」
切なげに揺れた目元が、俄かに下がる。
「やっと本物抱けるんだ……これが夢じゃないって証明してくれ」
「……センパイ……」
不意打ちの優しい微笑みに、一気に視界が歪む。
ポロポロと流れ落ちる涙は、センパイがひとつ残らず拾い上げてくれた。
そして、そっと瞼に口づけるとあたしを覗き込む。
「傍にいられないのって、結構しんどいもんだな」
そう言って小首を傾げて苦笑したセンパイ。
その表情は、初めて見せてくれる顔。
切なくて……愛おしい、センパイの顔。
嬉しくて、もっと涙が零れてしまった。
「あたしも……。あたしもセンパイが隣にいなくて、さみしかった……」