極上な恋のその先を。
突然の訪問者

――――――……
―――……


そうして、あたし達はたくさん話をした。

パリでの慌ただしい生活の事。
磯谷さんには、週末の食事も一緒にとるくらいお世話になっていた事。
今日まで連絡くれなかったのは、向こうで使ってたWi-Fiが故障してしまって使えなかった事。



それから。
本当は早く会いたくて、成田から、真っ先に会社に来てくれてた事。



3年分の思い出を、ふたりで共有する為に。
たくさん。たくさん。
その合間にキスをしたり戯れあったりしながら、甘い蜂蜜みたいな時間をセンパイの腕の中で過ごした。


そうして、やっとベッドから抜け出した頃には、すっかりお昼時になっていた。






「わあ!美味しそうですねッ」



木製のテーブルに置かれたのは、出来立てのチャーハン。
パチンと両手を合わせてそう言うと、キッチンにいたセンパイが振り返った。



「ほんとにんなもんでいいのか?」

「はいッ!ずっと食べたいと思ってたんです。センパイのお手製チャーハン」

「……」


そんなあたしを横目で見て、センパイはスープ皿をふたつテーブルに並べながら目の前に座った。

それを確認して、小さく手を合わせる。


「いただきます」

「どーぞ」


あたしが言うより早く、センパイはレンゲを口に運んでいる。
その髪には、大きな寝癖がついていて、なんだかすごく新鮮だった。

モゴモゴと頬を動かすセンパイが可愛くて。
たぶんあたし、今すっごくだらしない顔してると思う。


気を取り直して、まだ温かいチャーハンをパクっと頬張った。



ん!


「んんんッ! 美味しい~!」



思わずパッと頬を抑えた。

美味しくて、ほっぺた落ちちゃいそう!
さすが、中華好きなだけある!

感心しながら、次々と口に運んでいると。
痛いほどの視線を感じてハッと我に返った。



「ごほっ……な、なんですか?」



それはもちろんセンパイのモノで。

気が付けば、センパイのお皿はすでに空。
頬杖をついたまま、あたしをジーっと眺めていたらしい。

< 28 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop