極上な恋のその先を。
「……この会社なら知ってますよ」
「え?ほ、本当かい?」
「はい、ご案内します。一緒に行きましょ」
ニコリと微笑めば、少しだけ迷ったように視線を巡らせた男の人はコクリと頷いた。
「じゃあ、お願いできますか?」
「ふふ。どうぞ」
フワリと笑った目元が優しく細められた。
あたしは……この人を知ってる。
そんな気がしてならなかった。
どこかで会った?
営業で?
うーん……違う。
もっと、こう……。
「ここですよ」
「ほお。立派なビルだね」
へえ、と見上げている男の人を促すようにあたしはビルの入り口に向かう。
「もうここで大丈夫だよ。あとは受付の人に聞くから」
「そうですか? なら、私は失礼しますね」
「どうもありがとう。とても助かったよ」
「いいえ」
フルフルと首を振ると、男の人はニコリと笑って受付に向かった。
あたしは彼の背中を見送りながら、そのままエレベーターに向かう。
そうなのだ。
彼が探していた住所は、ここ。
あたしの職場の住所だった。
なんだろう。打ち合わせとかかな。
……。
とにかくあたしは仕事仕事。
今日もセンパイに怒られないように、気を引き締めないと。
その時、静かに扉が開いて。
たくさんの人が吸い込まれるのに合わせて、あたしもエレベーターに乗り込んだ。