極上な恋のその先を。
不穏な雲行き
……へ?
お、おと……う、さん?
お父さんンンッ!!?
ギョッとしてもう一度振り返る。
どこかで見た事あると思った。
センパイに、どことなく雰囲気が似てたんだ!
ひえええ!
「渚さん……渚さん?」
顔面蒼白。
あ、あたし何か失礼な事言ってないよね?
大丈夫だよね?
いきなり襲ってきた”緊張”と言う感情に震えそうだ。
「渚さん!」
「ッ!」
大きな声で呼ばれ、ハッと我に返った。
気が付くと、真山くんがあたしの顔を覗き込んでいた。
「渚さん、大丈夫っすか?顔、引きつりまくってますけど」
「え、うそ」
パッと両手で押さえると、プニプニと回してみる。
たしかに、固まっていたかもしれない。
「センパイ、なんかめちゃ動揺してましたね」
「……」
そう言って、真山くんはオフィスの外へ視線を向けた。
……。
ふたりは、休憩室で何か話をしているようだった。
センパイから、家族の話聞いた事なかったな。
あたしも真山くんの視線を追いかけながら、資料をかき集めるセンパイの背中を思い返していた。