極上な恋のその先を。
覚悟を決める時


「今日はありがとうございました」


お金を出そうとすると、すぐにそれは止められて。
顔を上げると、柘植さんが「いいよ」と笑った。


「でも……」

「いいのいいの。コレ、口止め料ってコトで」


あ……。
そっか。

美優は仮にもモデル。
柘植さんとのことは、秘密なんだ。


あたしはコクリと頷くと、席を立った。


「ご馳走様でした」

「いいから、ほら!行くわよ」

「え?」


考えるよりも早く、美優がさっさとお店の外へ行ってしまった。
残されたのは、あたしと柘植さん。



「い、いいんですか?」


思わず去って行った美優の残像を指差しながら言うと、柘植さんは眉を下げて苦笑した。


「いつもそうなんだよ。だいたい時間差で店を出てる」

「そうなんですね」


スーツ姿の柘植さんが、ふと目を細めた。



お店の外に出ると、壁に張り付いて何かを覗き見ていた美優が小さく手招きをしている。







「え、なに?もうセンパイたちいる?」


美優の隣に並びながら言うと、いきなり大きな声がホテルの廊下に響き渡った。



「どういうつもりなんだ、これは!」


男の人の声。
その声は、怒りで震えているようだった。




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