極上な恋のその先を。

嘲笑うかのようなその声に、思わず足が止まる。

なに?



「少し人より出来るからってなんだ。
ちゃんと仕事が出来る環境にいられて、初めて人はその能力を発揮できるんだよ」



ドクン、って胸が大きく鼓動を刻む。
足に根が生えたみたいに、あたしはこの場所から動き出せなくなってしまった。


と、そこへため息まじりの柘植さんの声がしてハッと顔を上げる。




「あれ、サノ・パシフィックの会長様じゃないの。あそこのご令嬢が和泉をご所望って話は本当だったってわけか」


サノ・パシフィック?
大手企業で、デザイン企画立案から開発まで幅広く手掛けている、あのサノ・パシフィック?

何度か仕事でお世話になった事もある、よく聞く名前だった。

そこの、ご令嬢がセンパイを?



「和泉の親父さんも、IT企業に勤めてるし僕らの会社よりも繋がりあるっぽいから、きっと見合い話を持ち掛けられちゃったんだろうね」


そんな……。

柘植さんから視線を戻す。


そのご令嬢と言う人は、父親と母親の後ろで俯いていた。
それだけなのに、立ち振る舞いだけで気立てが良くて、品が良いのが見て取れた。

何も言わず、ただジッと足元を見つめている。

センパイが帰ったから、ショックで?
うんん、そうじゃない。

そうじゃなくて……。


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