極上な恋のその先を。

今度はパシンと背中を弾かれる。


「大丈夫! 何があっても、お姉ちゃんは渚の味方だから。強気でいっといで!」

「……梢ちゃん」



……うん

―――うん!


そうだよね。自分で掴まなきゃ……!



ベンチに放り投げていた鞄を手繰り寄せて、勢いよく立ち上がった。


一歩、二歩歩いて、パッと振り返る。



「ありがとう。 あたし、行ってくる!」



ベンチに座る梢ちゃんと時東課長は、ニッコリと笑い頷いてくれた。
その笑顔は、とても似ていて。
胸の奥がジワリとあたたかくなった。



あたしもふたりに応えるように頷いて、強く地面を蹴った。


ヒールが走るのに邪魔だとか。
十代の頃より体が重いとか。
行き交う人達の視線とか。


そんなのどうだっていい。

幸せを掴むためには、前に進まなきゃ。




だから

走れ、走れ!




覚悟を決めるために……。


心が少しでも強くなるように。




< 62 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop