極上な恋のその先を。
今度はパシンと背中を弾かれる。
「大丈夫! 何があっても、お姉ちゃんは渚の味方だから。強気でいっといで!」
「……梢ちゃん」
……うん
―――うん!
そうだよね。自分で掴まなきゃ……!
ベンチに放り投げていた鞄を手繰り寄せて、勢いよく立ち上がった。
一歩、二歩歩いて、パッと振り返る。
「ありがとう。 あたし、行ってくる!」
ベンチに座る梢ちゃんと時東課長は、ニッコリと笑い頷いてくれた。
その笑顔は、とても似ていて。
胸の奥がジワリとあたたかくなった。
あたしもふたりに応えるように頷いて、強く地面を蹴った。
ヒールが走るのに邪魔だとか。
十代の頃より体が重いとか。
行き交う人達の視線とか。
そんなのどうだっていい。
幸せを掴むためには、前に進まなきゃ。
だから
走れ、走れ!
覚悟を決めるために……。
心が少しでも強くなるように。