極上な恋のその先を。
胸元に引き寄せて、頭ごとギュウって腕の中に押し込める。
センパイの手が、応えるようにふわりと背中に回る。
甘い香水の香り。
ほんのちょっとの煙草のほろ苦い匂い。
センパイの……匂い。
ポロポロといつまでも涙の止まらないあたしを。
センパイは、何も言わずただ背中を撫でてくれた。
「センパイ……」
「……なに?」
低くて、ちょっとだけ掠れた優しい声が耳たぶをかすめる。
こんなふうに甘い囁きは、あたしにしかしないって事、ちゃんとわかってる。
胸がキュって潰れちゃいそうだ。
「あたし……あたしは、センパイが好きです」
「……」
センパイの顔を抱き寄せながらそう言うと。
震える口から出てきた声は、情けないほど震えていて。
それでもあたしは、必死に次の言葉を探した。
「センパイが離れて行ってしまっても、あたしは大丈夫です。だって……この気持ちがあるんだもの。 だから、センパイは……パリで夢を掴んで下さいね? あたし、信じてます」
センパイの肩にそっと手を置いて、少しだけ距離をとる。
すぐにセンパイは顔を上げて、あたしと視線を合わせた。
あたしの精一杯の強がりと、嘘。