極上な恋のその先を。
「ん。よし、こんなもんかな」
美味しそうな匂いを漂わせ、肉じゃがが出来上がった。
一口ジャガイモを口に放り込んで、ホッと安心する。
日本にいた頃は、ひとり暮らしだったし。
ビール飲んでて、あんまり真剣に料理をしてこなかった。
そんなズボラな自分を、ここパリに来て恨んだ事はない。
こっちに来てからは、仕事で先に家にいる方がご飯を作る事になっていて。
あたしはもっぱら、和食を心掛けていた。
……だって、センパイが作るのは、料理人も顔負けの中華が多いんだもの。
「……遅いなぁ、センパイ」
パリは、日本にいた時と違って6時にはほとんどの企業が終わる。
サービス残業に関しては、すごく厳しかったし、だから7時にはあたしもセンパイもアパートに帰って来れていたんだけど……。
時計を見上げると、すでに8時を回っていた。
ふたり掛けのテーブルに、出来立ての肉じゃがを置いて、盛り付けてあったサラダを冷蔵庫にしまおうとしたその時だった。
―――バン!
勢いよく玄関扉が開く音がしたと思ったら、ものすごい勢いでセンパイが顔を出した。
「渚っ!」
「ひゃっ」
な、なに?
そのままいきなり肩を掴まれて、センパイは満面の笑みで言った。
「アドベンティスト教会な」
「へ?」
……あ、あどべ?