極上な恋のその先を。
「センパイのお手製だもの」
そう。
これは、センパイがデザインして作ってくれた、世界にたったひとつのあたしだけのドレス。
センパイが、式を先延ばしにしていたのには、こういう理由があったんだ。
「お前、まだ和泉くんの事そんなふうに呼んでるのか?」
「え?」
突然話が変わってパッと顔を上げる。
お父さんはちょっとだけ呆れたような、そんな笑顔を零した。
「これから夫婦になるんだし、変な意地張ってないで素直にならなきゃダメだぞ?」
「わ、わかってるよ」
「……でも。まさかお前が、こんな遠くでお嫁に行っちゃうなんてな」
はは、って笑って見せたお父さん。
その瞳が、ほんの少しだけ揺れた気がして、ハッと目を見張る。
「和泉くんの言う事聞いて、頑張るんだぞ」
また視線をそらしてしまった父の腕を、たまらずにキュッと引き寄せた。
「……うん。ありがとう」