タイムマシーン
***
夜になった
「花火まつりだー」
見れば花火の山
なぜこんな大量にあるんだ
「去年の残りを各家庭で集めてみました」
「吉田君さすがだね~」
それって大丈夫なの?
「甲斐さんは?」
「遅れるって」
「では、一足先に始めましょうか」
手持ちの花火を楽しんでいると
「違うよ!最後は線香花火だよ!」
「いや、打ち上げだ」
「線香花火!!」
「打ち上げ!!」
何をしてるんだ。あのカップルは
「篠崎さん、あのお二人は恋人同士ですか?」
「あーうん」
「へえ…。じゃ僕も彼女を連れてくればよかったです」
ええっ
「吉田くん、彼女いるの!?」
「いますよ。僕だって青春を謳歌してます」
意外だ。意外すぎる
「篠崎さんは甲斐さんとどこまで?」
「どこまでもいってないよ」
「ふむ。そうですか…」
まさか吉田くんと恋バナするとは
「篠崎さんが鉄なら、甲斐さんは炎でしょうか」
「はい?」
さっぱり分からない
「篠崎さんの鉄の扉を開けることが出来るのは
甲斐さんだけ、という意味です」
―この人、何か見抜いてる?
「…そんな風に見える?」
「少なくとも僕の目には」
…なに?
嬉しいような悲しいような
例えようないこの気持ちは
「水がないですね。汲みに行きますか」