偽りの婚約者
第1章

ー夏が過ぎ秋になった頃ー

夏の頃には考えられなかった彼氏…ではなく婚約者が私にはいた…

もちろん、本当に婚約したわけじゃない
いわゆる訳あり…ってやつだけど

夏の頃までは遊びで付き合うとかバカ?
とさえ思ってたのに…まさか私がこんなことになるとは…

ことの始まりは先週の日曜日

親友の由佳と買い物してた時

前から歩いてきた人がなんか落としたなーと思った…けどその時には私の足が落とした物の上に、乗っかっていた

メキッ

「あっ!す、すいません!」

「お前…ふざけんなよ?あぁ⁉︎」

「すいません!」

「羽花、謝んなくたっていいよ!物落としたのはあっちなんだから…ほら、行くよ!」

「でも…」

「おい、弁償しろよ!」

「女の子相手に何やってるのかな君は」

と、エリートっぽい男の人がきたのだ

「なっ、なんだよお前には関係ねぇだろ!つーか、こいつが俺の携帯踏み潰したのがわりぃーんだよ‼︎」

「けどそれは、君の不注意が原因だよね?」

「…ちっ、覚えてろ!」

男は古い捨て台詞を残し逃げて行った…

「大丈夫?」

助けてくれた男の人が私を覗き込む

「大丈夫です…あの、助けてくれてありがとうございます」

「このぐらい当然だよ」

にこにこ微笑みながらこんなことを言うから私は若干、この人も危ない人…?と警戒していると由佳が

「あの、本当に助けてくださってありがとうございました。では…ほら羽花行くよ」

「うん」

とりあえずお辞儀をして…と、行こうとしたら
急に眩暈に襲われ

「っ…」

「なっ…!」

さっきの男の人が抱きとめてくれた

「大丈夫ですか?」

「ちょ…大丈夫?」

「うん…」

さっきから由佳に心配かけてばっか…

と、さっきの男の人が

「貧血でしょうか…さっきのがこたえたんですね」

確かに怖かったけど…って

「すいません!

抱きとめてもらったままだったよ…恥ずかしい…

「え、と…なにかお礼がしたいのですが…」

ここまで助けてもらってただ帰るのはなんか気が引けるし…

「お礼なんて別にいいのに…あ、そうだじゃあ…」

そういって突然耳元に顔を近づけてきた

「2ヶ月間俺の婚約者のふり…してくれないかな?」

「えっ…、本気ですか?」

「冗談でこんなこと俺は言わない、ちょっと事情があって…っとまだ自己紹介もしてなかったね。俺の名前は霧野 賢人、これ名刺」

「ありがとうございます…」

…え、これ…超大手の会社じゃん!
24歳でしかも社長⁉︎

こんな社長さんがなんで私に婚約者のふりなんて…

「ここじゃなんだし…家に来てくれるかな?」

「あ、はい…」

と、返事をすると由佳が

「ちょっとついてって大丈夫なの?」

と小声で聞いてきた

婚約者のふりをしてくれって話はもちろん由佳には聞こえてない…

「んー、多分大丈夫だと思…う」

「私もついていこうか?」

と由佳

気持ちは嬉しいけど、霧野さんの事情を聞きに行くわけだし由佳がいるとまずそう…

「ううん、大丈夫。今日はごめんね由佳散々な目に合わせちゃって…」

「そっか…いえいえ、なんもなんも!…じゃあ私は帰るかな…羽花、気をつけてね?じゃ!」

「うん、ばいばいまた明日ね〜」

「じゃ、いきますか」

「はい」
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