あの日の記憶は湿った空気のにおいと君の泣き顔に彩られている
そういった答えも出ない問いを朦朧と考えていくうちに、意識は一つの曲がり角をむかえる。
もし、明信が、立川を振ったとしたら。
その瞬間、鼓動は気持ち、速度を上げた。
明信はきっと立川を幸せにしてくれる、幸せにできる人だと信じている。けれど、明信が立川を友達としか考えてなかったら。
おれの気持ちが偶然立川に向いたように、明信の気持ちもどこを指しているのかはわからない。どこにも指していないのかもしれないし、誰にも教えてないでいるのかもしれない。
そうしたら、おれは立川に好きだって言おうか。言えるかな。いや、だめだ。立川の告白が成功してくれないとだめだ。そんなに自分勝手なことは誰かでも許してくれない。
結局、たらればの考えに振り回されても、事実はどこに転ぶのかわからないのだと、自分に言い聞かせる。
人差し指の側面でくるりとペンを回した。