今日から私は彼の同居人
「生気を失ったような声だね」


純兄ちゃんの声でしばし物思いに更けていたことにはたと気づく。


「あ、ごめん」


「ううん。大事なものを失う悲しみはわかるよ。でも一度失ったものはもう帰ってこない。これからはこの家で新しい思い出を作っていこう」


彼は後ろを振り向き特徴的なタレ目を細めてにっこりと笑った。


久しぶりに見た彼の表情に懐かしい気持ちが甦る。


彼のタレ目はポール・マッカートニーかヒュー・グラントを連想させる。以前そのことを彼に言ったらそこまでタレてないと否定されたがそんなことはないと思っている。


2階に上がると右、正面、左にドアがあり、彼は右のドアを開けた。


「ここが薫の部屋だよ」


そう言われて通された部屋は6帖くらいの洋室だった。


既にテーブルやベッドが備え付けられていた。


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