今日から私は彼の同居人
『だめじゃないか勝手に離れちゃ!どれだけ心配したと思ってるんだ。薫に万が一のことがあったらと思ったら僕は…』


言いながら私をまた抱き寄せ、さっきよりずっと強く抱きしめた。


『ごめん、なさい』


彼に怒られてびっくりしたのと彼を見つけて安堵したのとで堪えていた涙が溢れ出した。


『栞は?』


『たくさん歩かせたらかわいそうだから母さんに来てもらって先に帰らせたよ。もう僕から離れちゃだめだよ』


『うん』


後にも先にも彼に怒られたのはこのときだけだった。


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