琴宮荘
荷解きが終わった私は、今からでも少し手伝おうと思い、さっき案内してもらったキッチンへ向かった。

「よう人間」

「きゃあ!?」

廊下でいきなり抱きつかれ、思わず叫んでしまった。
振り向くと、お昼に会った悪魔がいた。

「悪魔!!」

「悪魔じゃねぇ、俺の名前はクロだ」

悪魔のクロは、私をぎゅっと抱きしめた。

「ちょっと、何!?」

「いや、なんか抱きしめてると落ち着く」

「はぁ!?」

腕をほどこうとしたが、力が強くてほどけない。

「何やってるの?二人とも」

「柳彦!なんか離してくれないの、助けて!」

ちょうどやってきた柳彦に助けてもらい、私はクロの腕の中から脱出した。
こいつはなにを考えているのかさっぱりだ。

「クロ、またやってきたの?」

「んー」

「あんまり無理しちゃ駄目だよ?」

私から離れたクロは、今度は柳彦に抱きついていた。
彼は人に抱きつくのが好きなのだろうか?
柳彦は抱きついてきたクロの頭を撫でていた。
こうしてみると、クロがペットみたいに見えて、少し微笑ましかった。
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