SHE IS MINE(2014年七夕短編)


──
─────


「織賀ちゃん」


9時半までのバイトを終え店を出ると、例の美青年が待っていた。


わたしの名前を呼ぶ声がきれいだなと思ってしまった。


学校の男子より少し低いその声は凛としていて、魅力的だと思ってしまった。


耳に心地よさの残る、懐かしい声…。


「織賀ちゃん? どうかした?」


「あ、いえ…」


「もしかして、僕にみとれてた?」


キメ顔にドヤ顔を重ねた美青年がそう言った。


みとれてた、みとれてない以前に、顔がきれいすぎてボケられても全くおもしろくない。


「ダイジョーブでーす。みとれてないでーす」


相変わらずきれいな顔だなとは思ったけど。


「よし、帰ろう」


美青年は高らかにそう宣言すると、わたしの手握りずんずん歩き始めた。


< 14 / 61 >

この作品をシェア

pagetop