SHE IS MINE(2014年七夕短編)
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「織賀ちゃん」
9時半までのバイトを終え店を出ると、例の美青年が待っていた。
わたしの名前を呼ぶ声がきれいだなと思ってしまった。
学校の男子より少し低いその声は凛としていて、魅力的だと思ってしまった。
耳に心地よさの残る、懐かしい声…。
「織賀ちゃん? どうかした?」
「あ、いえ…」
「もしかして、僕にみとれてた?」
キメ顔にドヤ顔を重ねた美青年がそう言った。
みとれてた、みとれてない以前に、顔がきれいすぎてボケられても全くおもしろくない。
「ダイジョーブでーす。みとれてないでーす」
相変わらずきれいな顔だなとは思ったけど。
「よし、帰ろう」
美青年は高らかにそう宣言すると、わたしの手握りずんずん歩き始めた。