SHE IS MINE(2014年七夕短編)


“傷み”という言葉を知らないかのような綺麗な黒髪は、少し長くて前髪は目にかかっているけど不潔には見えない。


白い肌は少し不健康に見えるけど、そこがワルっぽくて素敵だ。


切れ長の目の奥で輝く黒目には、吸い込まれそうだ。


いや、もはや、吸い込まれたいです。


「おーい。大丈夫デスカー?」


恍惚とするわたしの顔の前でヒラヒラと手を振る美青年。


おお…。
仕草ひとつとっても美しい。


「ああ、えっと…。本当に助かりました。ありがとうございました」


やっとのことで我にかえるわたし。


「よくされるの? ナンパは」


「いえ、今日が初めてで…」


「そう。気をつけた方がいいと思うよ、オネーサン美人だから」


えっ…。
わたしが美人? いやいやいや。
丸い鼻と垂れすぎた目なんて、もはやコンプレックスなんですケド。


いやでも、社交辞令でも嬉しい!


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