MEMORY
-カトレアー
…そんな昔の事を夢に見て眠りから目が覚めた。
「…なんだったの」
数年前から、私の記憶はプツリ、と消えてしまっている。
自分が誰なのか、それは分かった。それはカトレア。
隣にいる人物が誰なのか、それも分かった。それはアランとイヴ。
でも、私のなかに響くこの声が誰のものなのか分からない。
ただ、懐かしいと思える声だな、とは思う。
「魔導師に、私の記憶を集めて来いと言われた。それも分かる。
けど、どうやって集めたらいいかは教えてもらっていない」
誰が近くに居るとかでもないのに声に出していた。
一番不安な事。
肝心なことが分かっていなかった。どうやって記憶を集めるか、と言う事
「カトレア?…もう起きたのか」
「うん、起きた。おはよう、アラン」
ガチャリ、と躊躇もなくドアを開けたアラン。どうやら幼馴染、という関係らしい。イヴもだ。
私は覚えていないけど
「朝飯、できたってよ」
「わかった。今行く」
ベッドから降りてクローゼットを開けると数着、同じ色のワンピースが入っている。
そのうちの一つを取り出すと上からかぶって着る。その後に今まで来ていた服を脱げばいい。
そうイヴに教えてもらった。
「イヴが作ったの?朝ごはん」
約一年、王宮で騎士をしていたアランと魔導師のイヴとした旅で覚えたこと。
イヴの料理はすごくおいしい。
魔導師だから体は魔法を使うことに特化していて体つきは見た目女の子。それに紫色の瞳もきれいだし、クリーム色の髪もとても綺麗、顔も可愛らしいから。言葉づかいも丁寧だし、少年なのに。
アランは剣術をしているから、それなりに筋肉も付いている。強い、らしい
この地域では珍しい青みのある黒髪、青い瞳。まあ顔は整っているし、それなりにかっこいいと思う
それで私は、小さな村で生まれたただの少女。だけど村の魔導師曰く、私は歌姫の生まれ変わり、らしいのだ
「私に自覚はないけれど」
「え?どうしたんですか?カトレア」
「声に出してたぞ、お前」
不思議そうに見つめてくるイヴと、フォークをこちらに向けてくるアラン。
今は食事中。
「ごめん、気にしなくていいから」
「ええー?!気になりますよ…!何に自覚がないんですか?」
「だから気にしなくていいって」
変に探究心を持っているイヴは正直言ってこういう時めんどくさい。