Sweet Rain
「はっきり言って今のお前を見る限り、不可解としか言いようがない。突然の来訪に、見知らぬ女の子が俺の家に泊まっていて、お前たちがここに来た理由が未だ分からずじまいときた。そろそろ俺の混乱を鎮めてほしいくらいだ」

「混乱、してたんだ」

「当たり前だろ。この状況で混乱しない奴のほうが不自然だ」

「そうか」

「そうだ」

「じゃあ、言うけど」

「頼むぞ」

「俺さ、家出してきたんだよね、実は」

「は?」

「いや、だからさ。家出、して来たんだって」

「だからものすごく申し訳ないんだけどさ、兄貴頼む! この通りだよ!」

そう言う弟の両掌が顔の前で綺麗に重ねあわされていた。

「しばらく俺たちをここに置いてほしいんだ。この通り!」

哀願するでもなく、嘆願するでもなく、弟はただただ頭を下げていた。

兄貴ならこんな弟のこと、無下に放っておくわけないよな。

そんな声すら聞こえたような気がした。

「頼むよ、兄貴! この通りだからさ!」

「……実家には電話いれておくからな。それが条件だ」

「え……いや、それだけは……」

「なら泊めない」

「そんな……」

「少しでも母さんたちを心配させないためだ。それでなくても、お前まだ高校生なんだぞ?」

「それに、そっちの子もか?」

「うん……」

「はぁ~……ホントにお前ってやつは……」

頭を抱えながらこれからの生活のことを考えていた。
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