Sweet Rain
突然2人もの珍客がうちで居候する羽目となった。

しかも一人は名前も知らない女の子だった。

先行きの不安さに押しつぶされそうになるのを堪えながら、なんとか気を持ちなおそうと必死だった。

「じゃあ、兄貴……いいのか?」

「今更追い返せるわけないだろ。ただ、実家には電話いれておくからな」
そう念を押すと、 「ま、しょうがないか。とにかく助かったよ、兄貴。やっぱ兄貴は世界で一番の兄貴だよ」と、調子のいいことを言っていた。

「お前の兄貴は俺だけだろうが」

「まあね」

弟はテレビをつけると、適当にチャンネルを回した。

僕はテーブルの上にあったタバコを鷲掴み、一本口につけると、ライターで着火させた。

ライターから灯される炎が揺らめいて、玄関口のドアの隙間からそよぐ風のせいだということに気がつくまで少しばかり時間がかかった。

見ると、弟が玄関の外に置きっぱなしだったロードバイクを中に入れようとしているところだった。

ドアの向こうでは、深く立ち込める雨雲が雷鳴と風をともなって静かに佇んでいる。

テレビの向こうでは、ニュースキャスターが「今夜から明日の朝にかけて、各地では大雨が予想されています」と告げていた。

明日の朝までに雨が止むとは思えないな。

心の中でキャスターにそう嘆いていた。
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