Sweet Rain

デアイ

「俺はさ、海沿いの道をまっすぐ北へ登ってきたんだ」

とつとつと、弟が語るかのように話しだした。

雨足はさっきよりかは幾分か弱まっていた。

これから夜更けにかけて、大量の雨が降り出すのだろう。

少なくとも、その前にはこの場所から立ち去りたかった。

僕は部屋のドアをすぐ出たところにある柵に身体をあずけていた。

口から吐き出されるタバコの煙が雨雲に向かって漂っていく様子が見える。

まるでここには居場所が見つからない、と言わんばかりに不似合いな煙だった。

物語はまだ、彼女と出会う前から始まっているらしい。

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