Sweet Rain

雨の降る日はたいてい悪いことばかりが起こる。

もちろん今日も例外ではなかった。

家に帰るとケータイに着信があったことに気がつく。

履歴から着信先の相手に掛けなおした。

「どうした?」

多少の威圧感と親近感をいっぺんに込めてそう口にした。

「ちょっと近くまで来たからさ。兄貴に会おうと思って」

「ああ」

「すまんな」

「いいよ、もう」

「いま、どこ?」

「彼女ん家。今夜はここに泊まってくつもり」

「そうか」

「なに?」

「いや、別に」

「そ。ま、そういうことだから。特に用事があったわけでもなかったし、また連絡するよ」

「わかった」

ソファにケータイを放り出すとベランダに出た。

雨の予報とは知っていたが降るのは夜からだったと聞いていた。

だから朝のうちに干しておけば問題ないだろうと高をくくっていた。

「あ~あ…なぜ降るよ、雨」

だから雨の降る日は好きじゃないのだ。


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