新撰組 『時が変わろうとも』
俺は屯所に戻るとすぐに土方さんの部屋に向かう
「土方さん、今いいですか?」
「神埼か。入れ」
「失礼します」
中に入ると土方さんは文机に向かって筆を走らせていた
「仕事中でしたか?」
「ああ、だがもう終わる。ちょっと待ってろ」
そういうと、土方さんはすらすらと筆を走らせる。
少しして土方さんがこちらを向く
「で、何の話だ」
「俺、今日巡察だったんです。いつもの道を回ってたんです」
「長州の奴がいたのか?」
「いえ、姿は見ていません。ただ、帰り道に視線を感じたんです。あと殺気も」
「誰も怪しい奴は居なかったのか?」
「はい。視線を感じてすぐ振り返りました。けど、怪しい奴はいませんでした」
すぐに振り返っても怪しい奴は居なかった。
あれだけの視線と殺気を俺に向けていたはずなのに。
「俺の勘違いかもしれません」
「いや、お前は新撰組の中でも力のある奴だ。
そんなお前が勘違いするわけないだろ」
「土方さんて以外と丸いんですね」
「ああ?てめぇは俺を何だと思ってんだ」
「え、俳句が下手くそな鬼?」
「てめぇ、いい度胸じゃねぇか」