新撰組 『時が変わろうとも』
「ヒクッ…怖い…人を斬ることが」
「ああ」
「人を、斬った時の感触が、頭から、離れないんです」
俺が話してる間、斎藤さんはずっと一定のリズムで背中を叩いてくれていた
「分かった。今はゆっくり休んでいろ」
斎藤さんの温かい手で瞼を覆われた
その斎藤さんの優しい手が俺を眠りに誘いこんだ
次の日
土方さんが気をきかせたのか一日休みをもらった
特にすることも無いので縁側で空を見ていた
「何をしている」
「斎藤さん。何もしてないですけど?」
「では、その手はなんだ」
「あ…」
俺は無意識の内に自分の手を引っ掻いていた
引っ掻きすぎたのか、所々血が出ていた
血を見た瞬間、またあのときの光景が頭のなかをよぎる
「大丈夫か?」
「ははっ、俺は弱いですね。近藤さんたちに恩返しをするって誓ったのに。俺の誠はこんなにも脆かった」
「俺も初めて人を斬った時は動揺を隠せなかった」
「本当ですか?」
「ああ。何日か刀を握れなくなった」
あの斎藤さんが刀を握らない時期が…?
「だか、俺は自分自身に言い聞かせた。本当にこのままでいいのか、局長や副長、新撰組のみんなに恩返しをしなくていいのかと」
「斎藤さんが皆さんに恩返しを?」