ありがとう さよなら(短編)
「ゼッテェもう、沙良に手は出すんじゃねぇーぞ」
「分かってるわよ。今日一日、私の恋人役になってくれればもう、沙良をイジメないって事でしょ?」
すごむ俺の事など物ともせずにフフンと笑うこの女を睨んだ
「後、キスをするっていう約束も守ってくれたしね」
クスクス笑うこの女の笑い声を聞きながら、拳を握りさっきの出来事を思い出す
沙良の前でこの女とキスをした自分自身に腹が立つ---
ゴシゴシ…---
シャツの袖で何度も自分の唇を拭った
こんな女とのキスなんて…
早く…
早く沙良とキスして、五十嵐との事を忘れてぇ…
沙良…
俺と五十嵐はなんでもねぇんだ
だから泣くんじゃねぇぞ。もう少ししたらお前に説明してやるから
だから…
それまで耐えてくれ
ごめん、沙良---
『ドーーーーーーンッ』
突然の大きな音に驚き、クラスの中にいる全員が一斉に静かになった