ありがとう さよなら(短編)
「指輪」
落ちた指輪を手に取り見るとそれは俺が以前、沙良の誕生日に上げた指輪だった
いつもは指につけているそれが、どうして沙良の手の中に納まっていたんだ?
疑問に思ったそれはすぐに拡散され、そしてその指輪をギュッと握る
沙良…
最期は俺を思って死んだんだな
それだけは分かる
俺のあげた指輪を握っていたんだから---
でもその思いは果たして
憎しみだったのか…
悲しみだったのか…
絶望にくれていたのか…
どんな感情だったのかは分からないけどでも、それはきっと良い感情ではなかったんだろう
ホンと、ごめんな---
ギュッと沙良を抱きしめていている内に、外の雑音が聞こえなくなってきた
そこにはただただ、沙良と俺だけがいる---
そんな空間が出来上がっていた