俺様王子様
「痩せたな、朱莉」

あたしは、未月の瞳に吸い込まれそうになる。

「…身勝手でごめん」

未月はそう言うと、おでこにキスをした。
あたしのほっぺたに涙が伝った。

「…ずるいよ、未月は!今さら謝られてもどうすることもできないのに!」

あたしはそれだけ言うと部屋に戻った。

せっかく前に進もうと思っていたのに、あんな風に未月に言われると立ち止まってしまう。
あたしは未月の寂しそうな瞳が忘れられなかった。

ほっぺたに未月の感触が残っていた。
あたしは、それに手を当ててぼーっとしてしまった。


翌朝、未月と神藤さんが明後日ドイツに旅立つことを知った。
< 146 / 160 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop