俺様王子様
「…バカらしい」

未月がボソッと呟いた。
みんながそれに気付いてざわざわする。


「幸せになってって、それマジで思ってるわけ?朱莉の気持ちってその程度だったのかよ」

王子様キャラを忘れてるのか、普段の未月の口調だ。

「なっ、何言ってんのよ!いきなり婚約者います、ドイツ行きますって言われる方の身にもなりなさいよ!この身勝手王子‼︎」

ムカッときて思わずあたしも言い返す。
幸せになってって口に出来るようになるまでどれほど泣いて、どれほど道に迷ったか。

そんなあたしを見て未月はハハっと笑った。

「俺が朱莉を初めて見たのは、中等部の時。学校見学に来てたんだよな、朱莉は。目をキラキラ輝かせて学園をキョロキョロ見回す朱莉は、俺なんかに気付きもしなくて」

「はぁ?気付くわけないでしょ!調子乗るんじゃないわよ」

あたしの返事に何人かの生徒が笑った。
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