俺様王子様
杏菜ちゃんにきちんとおめでとうを言えてないあたしは、杏菜ちゃんが戻ってくるのを教室で待ち続けた。

しばらくすると、ドアの方で音がした。

「あ、杏菜ちゃ…」

振り返ると未月だった。

「なぁんだ、未月か」

「なんだって何だよ」

「鏑木たち、明日の飛行機でイギリス行くってさ」

「え…。急すぎるよ」

「そうだな」

「あたし…」

涙がじわっと滲む。
そんなあたしに気付いて、未月はそっと抱きしめてくれた。

「大丈夫だよ」

未月の声が体に響く。
いつもと違う、優しい未月。何だか調子が狂う。

「だっ!大丈夫だなんてなんで簡単に言えるのよっ!」

「大丈夫だって思うから大丈夫って言ってる」

「意味わかんない!未月のバカ!」

素直に甘えればいいのに、それができないあたしはついついそんなことを言ってしまう。
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