俺様王子様
しばらくして杏菜ちゃんが教室に戻って来た。

「あら、朱莉ちゃん。まだ残っていらしたの?」

「あのっ、杏菜ちゃん…っ」

伝えなきゃいけないことはたくさんあるのに、胸が詰まって言葉にならない。
だけど、いつもあたしの話を聞いてくれた。うれしいことがあったら自分のことのように喜んでくれた。
学園にきて初めてできた、あたしの『親友』。


「あのねっ、杏菜ちゃんっ。おめでとう!幸せになってね!」


あたしは精一杯杏菜ちゃんに伝えた。


「それを言うためにわざわざ残っていてくださったの…?」


あたしはこくこくと頷いた。
胸がいっぱいで言葉にできない。

「ありがとう。朱莉ちゃん」

杏菜ちゃんはそう言ってあたしをぎゅーっと抱きしめた。

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