俺様王子様
着替えていると、ドアが開いた。

「ちょっと!何の用⁉︎」

未月が切なそうな瞳であたしを見つめる。

「あれがファーストキスってまじ?」

「嘘なんかついてもしょうがないじゃん」

「…ごめん」

すまなそうな未月の瞳。
さっきまでとは違う態度に胸がぎゅっと締め付けられる。

「もう過ぎたことだし、どんなにわめいたってファーストキスは戻ってこないんだからもう、いいよ」

あたしは投げやりに言い放つと未月の脇を通り過ぎた。

本当はもっとめちゃくちゃボロクソに未月を責め立ててやりたかった。
だけど、あんな表情されたらそんな気持ちになれなかった。
それに、どれだけ未月を責めたって、さっき自分が言った通りファーストキスは戻ってこないのだ。

(あー!なんか調子狂う)

あたしは、携帯のアラームをセットしてベッドに横になった。
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