本当の居場所


「さゆっ!!!」


その時、

炎の向こうから聞こえた、愛しい人の声。

顔を上げると、炎を避けながらあたしの元にやってくる陽人が目に入った。


「さゆ!! 大丈夫か!?」

「陽…人……?」

「ほら! 掴まって!」


座り込むあたしの腕を、自分の首に回し、引き上げる陽人。

そのままあたしを抱き上げて、店外に出た。


外に出たあたしが見たものは、店内が炎に包まれた、洋食屋さん。


「なに………」


騒ぐ野次馬。

近くには、やけどをした人が何人かいる。




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