本当の居場所


忘れもしない、その声、その顔。

Tシャツから微かに見える、二の腕のやけどの跡も。

忘れたくても、忘れることができなかった。


「さゆ……久しぶりだな」


優しく、けれど苦しそうに微笑みかける陽人。


「元気…だった?」


元気なわけ…ないのに。

あんなにひどいことして、傷が残らないわけない。

それでも陽人は優しいから、


「ああ…元気だったよ」


こう言うんだよね。




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