幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「はあ……」
あたしはため息をついた。
町娘の格好をするときより飾りが多く、重い頭が痛む。
鎖骨がちらりと見えるように着つけられた派手な着物に、お腹の前で結ばれた大きな帯。
歩くのにも一苦労なのに、こんなんで任務とか……。
結局あのあと、伊東参謀はむりやり山南先生を連れ出した。
そして島原のあるお店で、自分の一派の何人かと、遊女を何人か呼んで、宴を催した。
あたしは近くの店の屋根から、遠眼鏡を使って様子を見ることに。
山南先生はこういう場所になれていないのか、赤くなりながらもお酌をされていた。
遊女たちの舞や楽器の音が一行を楽しませているようだ。
その中で、一人の遊女が山南先生に寄り添った。
だんだんと時間が経つうち、山南先生のこわばった顔がほぐれていく。
そして、とうとう二人で部屋を出ていき……それから山南先生は、その遊女の元に通うようになった。
後の調査でわかった彼女の源氏名は、『明里(アケサト)』。
そしてあたしは……土方副長の口利きで、遊女として同じ店に潜入している。