幕末オオカミ 第二部 京都血風編


「……で、なんであんたがいるのよ」


初めて指名を受けて座敷に行くと、そこにいたのはすごく見覚えのある男だった。


「よう」


羽織を脱ぎ、刀を置き、そわそわと居心地悪そうにしていたのは……


「総司。どうしてわざわざ花代を払ってきたの?」


花代っていうのは、遊女を買う代金のこと。


いざ事に及ぼうとする男に指名されたらどうやってかわそうと考えていたあたしは、総司の顔を見て脱力した。


何か用があるなら、斉藤先生の式鬼を使えば良かったのに。


「他の遊女に変に思われないようにだよ。

お前が新撰組の一員ってことは、店主しかしらないんだろ?」


「そっか……総司、以前にもこういうところ来たことあるの?」


「いや、個人的にはない」


ということは、他の人と一緒に宴会をするくらいはしたことがあるってことか。


まあ、池田屋の後の宴も島原だったし、不思議はないけど。



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