幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「紅葉姉さん、失礼します」
どきん、と心臓が跳ねた。
すでに総司にのしかかられ、襦袢から足が丸見えになった状態で、部屋のふすまが突然さっと開いたから。
ちなみに『紅葉』はあたしの源氏名。
ふすまの隙間から顔をのぞかせたのは、まだ10歳の禿(かむろ)の、お小夜だった。
禿というのは、遊女について雑用をこなす女の子のこと。
そのほとんどが借金のカタに売られた子供たちで、大きくなったら遊女として働くことが決まっている。
お小夜は禁門の変の火事で身寄りを失い、ここにいる。
利発で可愛い顔の子だ。
秘密を守り、任務に協力することができたら、年季が開ける(借金を完済し、店を辞めることができること)のが少
し早くなるように、副長が店にお金を払ってあたしの味方にした。
「他の指名か?悪いけど、後にしてくれ」
総司があたしの首筋に口付けながら言う。
しかしお小夜はかまわずに、すたすたと近づいてきた。