幕末オオカミ 第二部 京都血風編
・明里の部屋で
天井裏に忍び込んだあたしは、じっと耳をすませた。
「まあ、また来てくれはったん?おおきに、山南先生」
明里さんの声がする。
そっと天井に小さな穴を開け、部屋の様子をのぞくと、山南先生が照れながら刀を置いていた。
明里さんはあたしと同じくらいの歳に見える。
すっとした目の美人なんだけど……。
「どっかで見たことあるような……」
あの少し低めの声も、どこかで聞いたことがあるような。
京に来てから1年以上立つし、巡察中に見かけたことがあったかな。
「体の調子はどうどす?」
「あ、ああ、以前よりも良くなったよ……明里のおかげで」
山南先生は照れたような笑顔ではにかむ。
ありゃあ、完全に惚れちゃってるな……。
明里さんも山南先生の話を笑顔で聞いたり、肩をもんだりしてあげている。
山南先生は、あたしたちには決して言わなかった隊内の愚痴も、明里さんにぽつぽつと話した。
明里さんは誰の悪口を言うこともなく、静かにそれを聞いていた。