幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「……しっかり癒されてる……」
彼女はいい聞き役みたい。
これなら心配ないかな。
色っぽい展開になる前に、退散しても大丈夫かな……。
しかし、そっと天井板から耳を離そうとした瞬間、明里さんの声の調子が変わった。
「山南先生。この前言ったこと、考えてくれはった?」
この前言ったこと?
「ああ……あのことか」
慌てて穴からのぞくと、山南先生が動かなくなった右腕をさすっていた。
「その腕、治すんやったら早い方がよろしおすえ。
この前お話した薬も、簡単には手に入らんもんやし。
機会を逃すと、次はいつになるか……」
腕を治す?薬を使って?
「わかっているよ。でも、キミの出した条件が……」
条件……明里さんは山南先生の腕を治す手段を知っている。
それと引き換えに条件を出したっていうこと?
「……簡単やおへんか。新撰組を脱けたらええだけやし」
……なんだって?
新撰組を……脱ける!?