幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「簡単じゃないんだよ。
基本、脱退しようとした者は切腹になってしまう。
うちの副長は厳しくてね」
困ったように笑う山南先生。
「それに……彼らが私を必要としていなくても、私は彼らがまだ好きなんだよ。
近藤さんも、土方くんも、沖田くんも……」
そう言う声は、少し震えているようだった。
こっちまで切なくなって、胸が痛い。
でもどうして、明里さんはそんな無茶な条件をつけるんだろう?
さっきまで優し気だった瞳は、山南先生をにらむように見つめている。
「けど、薬屋は幕府側の人間にはその薬を売ってくれへんよ?
しかも今は大津にいるし。
うちはそんな遠くまで行かれへんし、山南先生が直接行かな、売らんて言うてるんやから」
そんな……。
組では私用での外泊は禁止だから、大津まで行くのはちょっと無理だろう。
もし行けたとしても、その薬屋が山南先生の顔や情報を知っていたら、薬を売ってもらえない。
新撰組を脱退して行かなければ……。