幕末オオカミ 第二部 京都血風編
もとの座敷に戻ると、総司が布団に入ってふて寝していた。
総司に付き添っていたお小夜が、隣で寝ている。
「ぷっ。可愛い……」
まるで親子みたい。
そう思うと、不意に胸が熱くなった。
総司は、誰よりも愛しいひと。
あたしを本気で妻にしたいと、そう言ってくれた。
彼のためなら、もう一度命を投げ出したってかまわない。
「明里さんは、そうじゃないの……?」
もし本気で惚れているなら、あんなムリな条件を出したりできないんじゃないのかな?
だけど、あんなに強く脱退を進めるなんて、商売だけを考えて……とも思いにくい。
彼女は、いったい何をたくらんでいるの?
どんなに悩んでも、答えは出なかった。
ただ不吉な予感だけが、頭のなかをぐるぐるとハエのように飛び回っていた。