幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「え?なんで?」
そうとは知らず、きょとんとした顔の平助。
「や、山南さんが照れちまって、くつろげねえだろ」
「ああ、そうか。そうだね。
それにしても伊東さん、うまいことやってくれたなあ。
山南さん、日に日に明るくなっていくみたいだもんね。
どんな相娼(あいかた)さんか、俺も会ってみたいな」
「だから、ダメだって!!」
「なんだよ総司、そんなに怒らなくたっていいだろ。
山南さんの逢瀬の邪魔をする気なんか、全然ないよ」
わけもわからず怒鳴られた平助は、腑に落ちない顔をしていた。
俺は逃げるように、副長室へと急ぐ。
早く、楓の言っていたことを報告しなければ。
「土方さん、失礼します!」
あの明里という女、山南さんの怪我を治す薬を入手する手段を知っているという。
それはもちろん最重要事項だけど、俺や楓が気になったのは、明里の出した条件だ。
山南さんを新撰組から脱退させて、どうしようというのか。
腕が治れば、山南さんは手練れの剣客。
頭も良く、人柄もいい。
もしかしたら、敵側の人間が山南さんをほしがっているのかもしれない。
そして明里は、そういった人間と繋がっている可能性がある……。