幕末オオカミ 第二部 京都血風編
楓から聞いたことを報告し終えると、土方さんは眉根を寄せた。
「……くさいのは明里だけじゃねえな」
そうこぼすと、腕組みしたまま深いため息をついた。
「どういうことですか?」
「その明里を山南さんに紹介したのは誰だ?」
「それは……」
明里は伊東参謀が主催した宴に呼ばれたのだった。
ということは、伊東参謀と明里が繋がっているということか?
「俺の考えすぎならいいけどな」
「土方さん……」
「悪いな、総司。休息所の件も楓の養子の件も、先延ばしになっちまって」
そういう土方さんの文机の横には、どっさりと紙の山が積まれていた。
「いえ……ムリしないでください」
土方さんは近藤先生のために、楓を正妻にするのはあきらめろと言っていたのに。
結局、俺たちのことを考えてくれていたんだ。
会話が途切れた瞬間、ふすまの向こうから声がかけられた。
「副長、斉藤です」
「おう、入れ」
ふすまを開けたのは斉藤だった。