幕末オオカミ 第二部 京都血風編
第三章

・どこかで会った



さて……明里さんの正体を探らなきゃ。


宴会の場でお酌をする役で呼ばれたあたしは、同じ席に呼ばれ舞を舞う明里さんをじっと見ていた。


他にも5人の遊女が、その場にいた。


……正直、舞はあんまり上手じゃないみたい。


人のことは言えないけど、付け焼刃で覚えたようなぎくしゃくした動きをしているように見える。


「本人に直接近づいたらどうどすか?

明里姉さんは、紅葉姉さんが新撰組やって知らんのやし」


空いた食器を片付けながら、お小夜が耳打ちして去っていった。


ま、そうだよね……。


明里さんもこの店に入ったのはひと月前らしく、まだ大人気というわけではないようだ。


けっこう暇な時間を過ごしているようだから、本人に近づくのが一番早いよね。


でも、ボロが出ないように気をつけなくちゃ……。


宴会が終わると、指名された他の遊女たちがそれぞれの相方と床につくことになる。


指名されなかった新入りのあたしと明里さんは、偶然にも一緒に部屋に帰ることになった。


これは好機かも……!


ドキドキとなる胸を押さえ、あたしは決心して明里さんに声をかけることにした。



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