幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「うち、尾張の産まれなんです。姉さんは、どこどすか?」
負けずに質問するけど、明里さんは振り向きもしない。
「あの、キレイにお化粧してはりますなあ。
どうしたらそんなにキレイにできるんやろ。
なあ、明里姉さん、教えてくれんやろか」
今度はおだててみる。
すると明里さんは、ぴたっと足を止めた。
そして、ゆっくりと振り向く。
「……あんた、この明里の顔に見覚えはないかえ?」
「えっ?」
見覚え……?
やっぱり、前にどこかで会っている?
「ど、どこかでお会いしました?」
素直に聞いてみるけど、明里さんは冷笑を浮かべ、黙って去っていってしまった。
「えっ、ええ、ちょっと……」
彼女の姿が見えなくなったところで、頭を押さえる。
いったいいつどこで会ったんだろう?
大奥……なわけはないから、岡崎の村?
それとも京に来てから?
「こわっ……」
岡崎のくノ一だったら、あたしの素顔や素性を知っているはず。
それは、新撰組の脅威になる。