幕末オオカミ 第二部 京都血風編
「あー、そんな顔するなって。
俺は今でも、楓が大好きだよ。
もちろん、総司も」
「平助くん……」
「俺はずーっと二人の同志だからね!
これからもよろしくっ」
平助くんはにこりと笑い、その場から去っていってしまった。
なんて潔いんだろう……。
あんなに優しい平助くんなら、きっともっと素敵な人が見つかるよね。
それにしても総司の名前を聞くたびに、あのことを思い出してしまう。
『落ち着いたら、俺の妻になってくれ』
どうしていきなり、あんなことを?
初めての夜も、総司はあたしを不安にさせないように、すごく優しくしてくれた。
途中で理性が飛んだのか、結局傷は開いちゃったけど。
「なんか、ケンカばっかりのときが懐かしい気さえする……」
総司が優しいときは、あたしを気遣ってくれているときだ。
不器用だけど本当は優しいから、すぐに自分を責めてしまう。
今回だって、あたしに傷を負わせたこととか、色々と責任を感じているんだろう。
「……早く帰ってこないかなあ……」
一緒にいないと、不安ばかりが増してしまう。
早くみんなで無事に帰ってきてほしい。
そんな願いがかなうことはなく……。
結局、みんなが屯所から出動してから、20日以上経っても新撰組に出動命令は出なかった。
そのうちにあたしと平助くんの傷も、山南先生の体調不良もだいぶ良くなってしまった。