幕末オオカミ 第二部 京都血風編
夜中のうちに店に戻り、総司と交代で明里さんを部屋の外から見張っていたけど、特に異変はないようだった。
「……しかしあの女、どこかで見た覚えがあるんだよな」
総司が朝餉に箸をつけながら、もそもそと言った。
ちなみに総司は、昨夜遅くに泊まりにきて居続け(同じ遊女を連泊して買うこと)ているという形になっている。
もう明里さんも起きているし、他の遊女に私たちの姿を何度も見られるのも不自然。
なので、今はお小夜に見張らせている。
店の主人も、何か異変を感じたら報告してもらうことになっていた。
それはともかく。
「って、総司も!?」
「ん?お前もか?」
あたしだけじゃなく、総司もそんな気がするということは……。
「やっぱり、巡察中に京の街で会ったとか?」
「いや……街の人間なら、もっとはっきり覚えているはずなんだがな……。
俺はお前より早くこっちに来てるし、巡察で歩き回る回数も多いし」
ぽりぽりと漬物を食べながら、総司は首をかしげる。
「うう~、なんだよ、頼りにならないなあ……」
考えながら食べていたら、焼き魚がぐちゃぐちゃになっていた。
箸でつつきすぎたせいか、身がお皿の端まで飛び散っている。